コンポジット合成による高感度ノイズの軽減
一眼レフなどで高ISO感度で撮影した場合にはどうしてもノイズが発生します。高感度ノイズを回避する簡単な方法として、三脚を使い低ISOで長時間露光する方法があります。しかし三脚禁止だったり三脚を忘れたりしてなかなか使えない場合もあるかと思います。
そんなときは以下で紹介する方法を使うと高感度ノイズがかなり軽減できます! ただしこの方法は動体の撮影には使えないので注意です。
こんな風にノイズが驚くべきほど消えます。ノイズ軽減前後の写真から一部を切り出して比較してみましたが、かなりノイズが軽減されていますね。軽減前は草の質感は全く分かりませんが、軽減後には草の質感が明らかに分かります。
ちなみにこの方法は「コンポジット合成」というらしく、天体写真では割とメジャーな手法のようです。
コンポジット合成による高感度ノイズの軽減方法
それではコンポジット合成による方法を説明します。撮影形式はJPEGでもRAWでも可能です。しかしJPEGだと撮影時にノイズ軽減処理がカメラ側で自動的に行われてしまう(このノイズ軽減処理は性能が良くない)ため、可能な限りRAWでの撮影をおすすめします。
連射で同じシーンの写真を複数用意
この方法の一番のポイントは高ISO感度時に連射で同じ写真を複数枚用意することです。もちろん手持ち撮影で構いません。手持ち撮影なので画角は多少ずれますが、後に補正するので問題ありません。
ほぼ同じ画角で複数枚撮影することが必要です。
Photoshopで自動処理
同じ画角で複数枚撮影した写真を用意します。その後Photoshopを起動し「ファイル」→「スクリプト」→「統計」と進みます。
そして「参照」をクリックし用意した画像を読み込みます。『画像のスタックを選択』で「平均値」を選択します。
このとき『ソース画像を自動的に配置する』に必ずチェックを入れます。手持ちによる画角のズレが解消されるのでチェックを忘れないようにしましょう
四隅をカット
手持ちによる画角のズレを補正した影響で、四隅にがピッタリとは合っていないです。なので気にならない程度に周りをカットします。周りをカットしたくない場合は『コンテンツに応じる』で四隅の上手くできていない部分を塗りつぶしても良いかもしれません。
仕組みとQ&A
なぜコンポジット合成でノイズ軽減ができるのでしょうか。
仕組み
詳しく説明すると数学的になってしまうため、大雑把に説明します。詳しい説明はこちら(準備中)
高ISO感度で撮影した場合、得られる画像データは『真の写真』(いつも同じ)に『ノイズ写真』(アナログテレビの砂嵐のように毎回変わる)を合わせたものになります。この『ノイズ写真』は毎回変化し、範囲はマイナスからプラスまでです。なので『ノイズ写真』を足し合わせるとプラスとマイナスが足し合わされてノイズがほぼゼロになるのです!!
結局、『真の写真 + ノイズ写真』の平均をとるとノイズ写真はほぼ消え去り、『真の写真』のみが残るというわけです。
Q&A
lightroomとかでノイズ軽減すれば良くない?
lightroomやカメラ内部で行われるノイズ軽減は、あくまでノイズを伸ばして目立たなくしているだけです。それに対しコンポジット合成ではノイズを数学的手法で消去しています。
具体例で言うとlightroomでノイズ軽減をかけすぎると写真がのっぺりしてしまいますが、この方法ではのぺっとしません。
同じ画像を何枚用意すればいい?
画像の枚数が多いほど性能は向上しますが、枚数が増えると性能の伸びが弱いです。なので4~36枚程度がいいのかなと思います。
詳しく説明すると画像の枚数に対する性能の伸び方は√nとなっており、画像n枚のときは1枚のときに比べて性能が√n倍になります。(詳細な説明(準備中))
もう少し具体的に説明します。ノイズ軽減される度合いは画像1枚だけのときに比べて、画像4枚のときは√4=2倍、
画像9枚のときは√9=3倍、画像16枚のときは√16=4倍… となっています。7倍8倍…と性能を求めるにつれて、必要となる枚数もかなり増えることがわかります。
カメラの連射性能やカードへの書き込み速度を考えると、4枚~36枚程度が限度かと思います。
Photoshop持ってないけど同じ方法使える?
レイヤー機能を持つソフトウェアなら、平均値による方法は原理的には使えます。
撮影した画像をレイヤーで各々読み込み、位置を合わせます。その後各々のレイヤーの不透明度を1/nにすれば同じ結果になるはずです。
とはいえ位置合わせが自動でできないとかなり面倒くさいと思われます。
まとめ
コンポジット合成によるノイズ軽減はすごいです。数学的な統計処理によって真の値(に近いもの)を得られるのでノイズがかなり減ります。
三脚使ったほうが早かったり、動体撮影には向かなかったりしますが、こういう方法があると覚えておくだけでいざという時に役立つかもしれません。
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